『本当の登山の話をしよう』服部 文祥・著(株式会社 デコ)【選書・文化】

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『本当の登山の話をしよう』服部 文祥・著(株式会社 デコ)

簡単レビュー

人はなぜ山に登るのか――著者30年にわたる「登山批評」の集大成。
第Ⅰ部は、デビュー作『サバイバル登山家』以前に書かれた、著者の原点ともいうべき隠れた名篇のほか、若き日に憧れた和田城志へのインタビュー、山で書いた「遺書」についての回想記を収める。
第Ⅱ部は、山野井泰史、星野道夫、フリチョフ・ナンセン、デルスー・ウザーラ、ウォルター・ウェストンら、著者が敬愛する人物たちを通して登山とは何かに迫る。また、クマとのつきあい方、世界と日本の最高所の意義について私論を展開する。
第Ⅲ部は、廃山村での自給自足のほか、狩猟のパートナー・ナツ(犬)の失踪騒動、もうひとつのライフワーク・中距離走の喜びなど、近年の暮らしのあれこれを語る。最後に、登山よりも先に志したという文章表現について論じる。

              ー--

〈なぜ山に登るのかという質問を、山に登らない多くの人が、山に登る人に投げかける。
わかりやすく答えるのは難しい。質問に含まれる「なぜ」の裏には、「辛くて、大変で、無償なうえに、もしかしたら死ぬかもしれないのに、なぜ」という思いが隠されているからだ。「死ぬかもしれないのになぜ」とまっすぐ聞いてくれるなら、風景やストレス発散が、登山の理由にならないことは明白だ。景色を見るために死ぬ思いをする人はあまりいない。
山に登る理由はただ一つ、自己表現だと、思っている。自分が山(ひいては地球というフィールド)で何ができるのか。それを知りたいし、示したい。そういう意味では芸術一般と変わりがない。登山はダンスに似た身体表現の一種類だと私は考える。〉「富士山 世界で一番手頃な高所」より

             ★★★

わたしの同僚に、まったく登山をしないが「山岳小説を読む」ことや「山岳雑誌」を日常的に眺めることや、登山周辺のギア、ファッションなどに精通している方がいた(女性よ)

彼女がよく言っていた。

「山岳小説やエッセイってすごく面白いよね!」と。

わたしもそう思う。

そもそも登山とは、「審判や観客がいないところで行われるため、記録や報告文を残すのが登山家の重要な行為になっている」と教えてくれた。

そして、こうも言っていたな。

「だってさ、自然って、生命に対して無関心じゃん!吹雪になって、どんなに祈ろうと、叫ぼうと、お金を積もうと、自然は何もしてはくれないよ」と。

そんな、「超過酷で、しかも命がけで、無償の登山記録が読める書籍は、宝物じゃない!?」とまで言っていた。

職場にこうした「一見の価値」を認めつつ、「登山とは・・・一体なんだろう?」って、見つめる同胞が居た。

今思い起しても幸せな時間を共有できた。

                ー--

今回、紹介した「本当の登山の話をしよう」の著者である、服部 文祥氏は、登山の核心について、冒頭で述べている。

かなりの見栄っ張りな性格の著者は、早い時期から「ひと昔前の登山ヒエラルキー」に性根が侵されていたのだそうだ。

誰よりも早く、日本よりも海外のアルプスへ。

海外のアルプスよりヒマラヤへ、という風に。

そして、登山家の憧れ「K2」の遠征に参加することができた。

どんどん、ヒエラルキーの階段を「どうだ!」と言わんばかりに登り詰めていくのだが。

その後、ヒエラルキーなどまったく意味を持たない、ヒマラヤの麓で暮らす村人に刺激を受け、己の目指す道「サバイバル登山家」のスタイルが確立されていく。

要するに、K2が「本当に登りたい山じゃなかった!」ってことだと。

K2の遠征に参加したのは、「世界の憧れK2の登頂者」という肩書が欲しかっただけ。

当時のガールフレンドには「山登りなんて、ヒモをつけて岩を登るんでしょ?」と言われ、母親からは「命がけのことがカッコいいと思ってるんでしょ?!」と言われ、仕事の同期からも「それって、現実逃避なんじゃない?!」とか。

総じて、皆が皆、同じことを言う。

エッセイの中では、それは「なぜ、山に登るのか?」に意味を見つけることにそれぞれが躍起になってしまったように思えた。

とういうわけで、この書籍もかなり面白い登山の話がこれでもか!というぐらい披露されている。

しかも、すべて著者本人が体験した話。臨場感抜群だ(笑)

というわけで、普段は1000mから2000mぐらいの国内低山でハイキングをするわたしも、雨の続く今年のグリーンシーズンは読書三昧だったわ。

10月の最後あたりでどこかの低山にハイキングに出かけたいなあ。

それでは、また!

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『SunTAMA Style』2025年9月30日記事