「職業としての小説家」でわかった村上春樹の仕事術【書評・ワークスタイル】

【新規追加326回】

村上春樹氏は稀代の小説家だ。

わたしがもっとも村上氏に共感するのが「仕事術」なる部分。

ベストセラー小説をどう、生み出しているのか?といった俗世間的な目線ではなく、しっかりとしたルーティンを作って、執筆という仕事を生活に落とし込んでいる真摯な姿勢に共感してきた。

例えば、

起床・・・午前4時。そこからコーヒーを淹れ、一気に原稿用紙10枚ほど書く。

朝食からランチまで・・・書けるかぎり書く。

午後から夜・・・自由な思索の時間(雑務やランニングなどをこなす)

と、一年中、この繰り返し。SNSはやらないそうだし、あまりTVも観ないそうだ。

まあ、今ではSNSはさておき、TVに夢中なんて人は少ないだろう。

ここでは、村上氏の「職業としての小説家」という村上氏の仕事術を網羅した一書を取り上げてみる。

職業としての小説家

簡単レビュー           ★

いま、村上春樹が語り始める~小説家は寛容な人種なのか……。

村上氏は小説家になった頃を振り返り、文学賞について、オリジナリティーについて深く独自の思考を書き表す。

さて、何を書けばいいのか? どんな人物を登場させようか? 誰のために書くのか? と問いかけ、時間を味方につけて長編小説を書くこと、小説とはどこまでも個人的でフィジカルな営みなのだと具体的に順々と語る。

小説が翻訳され、海外へ出て行って新しいフロンティアを切り拓いた体験、学校について思うこと、故・河合隼雄先生との出会いや物語論など、この本には小説家村上春樹の生きる姿勢、アイデンティティーの在り処がすべて刻印されている。

生き生きと、真摯に誠実に。

もくじ

第一回 小説家は寛容な人種なのか

第二回 小説家になった頃

第三回 文学賞について

第四回 オリジナリティーについて

第五回 さて、何を書けばいいのか?

第六回 時間を味方につける──長編小説を書くこと

第七回 どこまでも個人的でフィジカルな営み

第八回 学校について

第九回 どんな人物を登場させようか?

第十回 誰のために書くのか?

第十一回 海外へ出て行く。新しいフロンティア

第十二回 物語があるところ・河合隼雄先生の思い出

あとがき

                 ★

文中の「仕事術」に注目して抜粋してみよう。

~小説をひとつふたつ書くのは、それほどむずかしくはない。しかし小説を長く書き続けること、小説を書いて生活していくこと、小説家として生き残っていくこと、これは至難の業です。普通の人間にはまずできないことだ、と言ってしまってもいいかもしれません。そこには、なんと言えばいいのだろう、「何か特別なもの」が必要になってくるからです。それなりの才能はもちろん必要ですし、そこそこの気概も必要です。また、人生のほかのいろんな事象と同じように、運やめぐり合わせも大事な要素になります。しかしそれにも増して、そこにはある種の「資格」のようなものが求められます。これは備わっている人には備わっているし、備わっていない人には備わっていません~(文中抜粋)

ちょっと、村上氏の書く、回りくどい小説みたいな「本心」というか「核心」の部分だ。

この部分を解釈すると、「小説家には、小説を書き続ける能力(資格)が必要だ」と。

村上氏は30年以上も小説を書き続けている。

そして、30年前も今もベストセラーを連発している。こんな小説家は他にいない。

村上春樹はこれだけ長い間、どのように、この資格を維持しているのか?本書には、3つの仕事術が書かれている。

① ルーティンを固める・・・(小説家は不規則な生活をして夜中に原稿を書くなどの通例を否定する氏。当然、締切前になると何日も徹夜で書き上げるなんてまったくない。それこそ、ルーティンに落とし込むために長編を書く時には環境を替えるべく「海外」で書く。ノルウエイの森はイタリアで3年間住み込んで書き上げた大ベストセラーだ)

② 肉体を鍛える・・・村上氏の最重要ルーティンは毎日1時間のランニング。文中にはこう書かれている~肉体的運動と知的作業の日常的なコンビネーションがもっとも重要。クリエイティブな労働には運動が理想的な影響を及ぼすのだそうだ。

③ 最善を尽くす・・・驚くのは村上氏の推敲力だ。氏は丸2年も費やして書いた小説をそれこそ、ごりごりに書き直したり、推敲につぐ推敲を何百回と続ける。で、ある日まったく違う作品に生まれ変わるものも出てくるそうだ。どんな時にも、飽きず懲りず最善を尽くすのだ。

この3つが仕事術の柱である。

                 ★

この3つの柱を打ち立てて、小説家として売れる前の、この先どうなるかわからないという時期のことですら並々ならぬ覚悟で臨んだのだろうと推測する。

なる前から、もうなっている、なってしまっているのが、この「仕事術」の恐るべし効果なのだ。

わたしは、この「職業としての小説家」を発刊すぐに手に入れて、熟読しつつそのストイックかつ熱の籠る靜かな仕事の姿勢に感動し、自分の仕事の仕方にもどんどん取り入れてきたのだ。

例えば、毎日早朝に書く(ブログやその他記事を約2000文字程度)と、村上氏はランニングだが、わたしはトレッキングやウォ―キングなど、歩く行為を続けるなどだ。


作品ではなく、その人の仕事術に惚れ込んでしまった例外な話。

でもね。完全に「村上春樹ワールド=上質で丁寧な時間の使い方と暮らし」を知りたくて好奇心を搔き立てられた。

これも、村上春樹氏の罠なんだろう。恐るべし。

まんまと村上沼にハマった(笑)

   

“「職業としての小説家」でわかった村上春樹の仕事術【書評・ワークスタイル】” への2件の返信

  1. 「淡月や 見えぬ未来に おののきぬ」 清流
     今は誰も同じだが、この先どうなっていくのか読めぬ不安に躊躇する。近未来をも朧にかかりわからない。いよいよ今日から100日後は東京五輪開幕、シーズン4はこのカウントダウンとなる。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です