『読書からはじまる』長田 弘・著(ちくま文庫)~素敵な言葉溢れる本を見つけた🎶【選書・文化/旧記事更新38】

【ブログ新規追加1160回】

読書からはじまる』長田 弘・著(ちくま文庫)


「活字離れ」と言われるようになって数十年。

「本」を価値のないものだと言う人は、まずいないだろう。

しかし、活字離れ=本離れが当たり前のように叫ばれてきた。

わたしが思うに、基本的には本好きな人からすれば本とは、すべてのはじまりのような意義を持ち、崇高な品なんだろう。

読みたかったあの本、ずっと探し求めていた本が見つかった!、偶然書店で見つけた素敵そうな本などなど・・・本をめぐるストーリーさえもちょっとした小説のようなシチュエーションが思い浮かぶ。

一方で、基本的に本が好きではない場合の理由は様々で、本は苦手、本を読むよりスマホでの情報収集やSNSの繋がりが大事!とか、電子書籍(読書とは言えないかも)を読んでいるから・・・など。

まったく、二者両極端よね。

要するに、昨今の「活字離れ=読書離れ」という問題は、本というものについての考え方だろうと、「読書のはじまり」の著者・長田 弘氏は語る。

つまり、本というのは「本という考え方」そのものだと。

それはひとえに「考えの容器」や「自己表現の道具」にすぎないものではない。本そのものに価値があるのだ。

大切なのは、本は「著者の考え方を表すもの」で、その考え方を作り集めたものが本だと解説されている。

だから、「本を読む」ということは、その内容や考えを検索し、要約するということとは一線を画すものだと。

「本を読む」というのは、その本によって、本という一つの世界の作り方を学んでいることになるそうだ。

「本という考え方」を人々の間に育てて、言葉を残すことが「本」の持つ使命だ。

「本の文化」を支えてきたのは「ここにある言葉を、ここにいない人に手渡せる」という先々を見据えて行く行動にほかならない。

『読書からはじまる』では、「読まない本に豊かさがある」や「たくさん読む」が正解ではないことや、「一生忘れない」とかは嘘?!とか、本という極めて個人的な友達との関係をどうやって紡ぐのか?など、あらゆる視点から本との暮らし方を唱える素敵な一書だ。

~本はあなたを孤独にしない。読書が苦手、活字に疲れた・・・そんな本音にあたたかに寄りそう「人間」を楽しむ至高の読書エッセイである~

もくじ

• 本はもうひとりの友人

• 読書のための椅子

• 言葉を結ぶもの

• 子どもの本のちから

• 共通の大切な記憶

• 今、求められること

• 読書する生き物

• 失いたくない言葉

                 ★★★

今回、『読書からはじまる』を勧めてくれたのは夫だ。「これ、いいよ」と。

夫は、この詩人の読書エッセイから、読書のための椅子を購入した。(読書のための椅子)

わたしは普段、出版社で書店営業を担っている。ジャンルは児童書・学参・知育玩具など。

『読書からはじまる』を読んで、子どものための「本」の考え方や在り方を学ぶことができた。(子どもの本のちから)

そこに書かれていたのは「子どもの本というのは、子どものための本ではなく、大人になってゆくために必要な本のこと」

この言葉を本の仕事を続けて行く間は、抱きしめて行こうと決めた。

いつものブックレビューとは違う視点で書いてみた。

それでは、また!

こぼれ話

長田 弘氏の著作はすべてタイトルが素敵。

『私の好きな孤独』新潮文庫

『なつかしい時間』岩波新書

『言葉の果実』潮文庫

『世界はうつくしいひと』みすず書房

これ以外にも、読書エッセイはた~くさん!

少しだけ、文章がくどいところもあるけど、言葉の素敵さには適わない。

よろしかったら、お手に取ってみてくだされ。

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『Life Tour 21st』2016年3月1日記事

http://lifetour.blog.jp/archives/1052718462.html「時の人に会いに行く

『みいこStyle』2020年3月1日記事

http://miikostyle.blog.jp/archives/23749415.html「弥生・三月は生まれ変わる月

『SunTAMA style』2021年3月1日記事

『SunTAMA Style』2022年3月1日記事