『山なんて嫌いだった』市毛良枝・著(ヤマケイ文庫)~元祖山ガールたちに出会う週【選書・文化】

【ブログ新規追加472回】

山なんて嫌いだった』市毛良枝・著(ヤマケイ文庫)

• 簡単レビュー

芸能界一の山好きで知られている市毛良枝さん。

日本トレッキング協会の理事を務められていた頃、書かれた名書だ。(今から20年前)

40歳で友人に連れられて登った燕岳(標高2763m)が初登山だったそうだ(驚!)

この登山が女優、市毛良枝さんの人生観を大きく変える。そんな数々のドラマがこの書には淡々とつづられている。

山と出会い、心惹かれてゆく過程を素直に表現された初の書き下ろしエッセイである。

「努力・根性・汗をかくのがキライ!」という大の運動嫌いだった彼女が、山に登ることによってどんどん変化してゆくのが手に取るようにわかる。

初登山の燕岳から、南アルプス塩見岳、八甲田山、安達太良山、八ヶ岳、双六岳、槍ヶ岳、九重山、天城山、キリマンジャロまで、ほぼ10年間の山旅の全貌はもちろんのこと、『山と渓谷』取材の裏話や登山家(故・田部井淳子さんら多数)との交流、今ならSDGsで取り上げられるであろう山岳エコロジー問題、そして、ご自身の内面をつぶさに描き切った渾身の一書だ。

山でみつけたものは、自然の素晴らしさと本当の自分だった」文中より抜粋。

なぜ山に登るのか?山を知りたい人には必見の一書。

                ★

わたしの憧れ・元祖山ガールに会いにゆく

今週、満80歳を迎えた叔母に会いに行った。

平日の午前10時。叔母は家の裏で畑仕事中だった。

実に2年ぶりの再会だ。

叔母は、栗の木の下で雑草と夢中になって格闘している。声をかけたら

「まあ!〇〇子ちゃん!」と懐かしい優しい声で叫んでくれた。(昔のホームドラマの女優さん風できれいなの)

そこから、約100坪(ヘクタールにすると0.0330579・笑)ほどの畑の中を歩きながら、「どーしても話たいことがあるから上がって!」と懇願され、コロナだから「30分だけ」といいながら上がらせてもらった。

どーしても話たいこととは、親戚の方々の近況などだ。それも大事な情報源かもしれないと思い興味を示しながら聞かせてもらった。

叔母はそういえば大の山好きだった。膝や腰を患う前、70歳近くまでは、登山サークルに入って仲間たちと毎週のように山に馳せ参じていた。

そして、客間TVの横にあった「市毛良枝さんの本」のことを思い出したのだ。(※市毛良枝さんは現在71歳。先の「山なんて嫌いだった」を執筆した当時は50歳前後だった)

市毛良枝さんにも深く影響を受けたとも聞いた。

当時59歳だった叔母は「何か新しく挑戦したくて大好きな自然と関われる登山を趣味にした」と聞かされていた。

80歳のプレゼントは何にも持って行かなかった。ただ、元気な姪の姿を見せるだけで充分だと思ったからだ。

今、叔母の関心事はこの2年患っている圧迫骨折を完治させる術を知ることだ。

わたしは母の圧迫骨折を真近で見て介護をしてきたからそのエピソードを話した。そりゃあ、もう真剣に聞いてくれた。

「圧迫骨折が完治したら昔の登山や山行の話を聞かせてね!」と言っておいた。

いつものように、家の畑で収穫したじゃがいもと、たまねぎをいっぱいお土産に持たせてくれた。

叔母に会った日は、もらったじゃがいもをさっそく茹でながら、次の低山ハイクで履くトレッキングシューズの手入れをした。

わたしの憧れる「元祖山ガール」は80歳を迎えた叔母だという話。

『A HISTORY OF PICTURES 絵画の歴史~洞窟壁画からiPadまで』デイヴィット・ホックニー&マーティン・ゲイフォード・著 SEIGENSNA 【選書・文化】

【ブログ新規追加467回】

芸術の秋到来。

まったく絵を描かないわたしが、知る由もない絵画を書く際の行き詰まりや表現への苦悩。

そういった画家が持つ思考や悩み、絵画への尽きぬ情熱、新進気鋭のデバイスを利用した新創作への挑戦。

こんな情報が満載の一書を紹介する。

• 書籍概要

待望の増補普及版。時代と地域を超え、写真、映画、デジタルまでを網羅した画期的な絵画書である。

現代美術界の巨匠デイヴィッド・ホックニーが、美術批評家マーティン・ゲイフォードとの対談を通して 有史以来の視覚芸術に通底する表現の本質に迫る。

デイヴィッド・ホックニーは語る。

画像(Picture)を用いることは目で見たものを説明する唯一の方法。

しかし、三次元の人物、物、場所などを、二次元の絵画に置き換えるには、どうすればよいのか。

絵筆、カメラ、コンピューター・ソフトウェア用いて描かれた「画像」は、私たちが周囲の世界、ひいては私たち自身をどのように見ているかを理解するにはための大きな手がかりとなっている。

本書は、絵画(画像)の歴史を、著名な芸術界の第一人者同士の対話によって叙述したもの。

鋭い洞察を備え、自由な思考を促し、現実を表現する様々な方法に関する私たちの理解を深めるのに大いに役立つだろう。

• もくじ


序 画像、美術、そして歴史
1 画像と現実
2 徴をつける
3 影とごまかし
4 時間と空間を描く
5 ブルネレスキの鏡とアルベルティの窓
6 鏡と映像
7 ルネサンス:自然主義と理想主義
8 紙、絵具、複製される画像
9 舞台を描く、絵画を上演する
10 カラヴァッジョとカメラのような目付きの男たち
11 フェルメールとレンブラント:手、レンズ、そして心
12 「理性の時代」の真実と美
13 1839年以前と以後のカメラ
14 写真、真実、そして絵画
15 写真を使う絵画、使わない絵画
16 スナップショットと動く映像
17 映画とスチル写真
18 終わりのない画像の歴史

               ★

全頁366だが、装丁、中の絵画、作品のテキストが網羅されていて、二人のクリエイターの対談で一切が進められている、とても読みやすく楽しい本だった。

ただ3850円(税込み)と。

少し高価だが絵を描く人だったら一冊手元の持たれると良いと感じた。

特に「iPadで絵を描く」という現代のデバイスを瞬時に取り入れて素描した絵などとても興味深い。

わたしごとだが、チェコ人の友人(40代女性)の画家が、7年前だったかな、「iPadで描いた家の周りの自然」を表現した作品を集めた個展を有楽町で開いた。

当日行けないと打診すると、近所まで来てくれて、iPad の中の素描を見せてくれた。

緑の美しさや川の揺らぎなど、いつも身近にある風景が iPad で描かれたことで活き活きと現代風に表現できるのだな~っと、新鮮な気分にさせられたんだ。

今回、紹介する「絵画の歴史」では、おもに「画像」の話から二人の対談がはじまる。

画像の歴史は、洞窟に始まり、現時点では、コンピューターのディスプレイ上で終わると。

この先どうなるかは、誰にもわからない。

ひとつ確かなのは、「難題」がついてまわること。

三次元の世界を二次元上に表現するにはどうすればいいのだろうか?

と、こんな風に疑問で閉じられた対談&絵画集。

絵心のある方。

二人の対談を読まれて、この「難題」に取り組んでみるのも面白いかも。

わたしはできないんで(笑)

よろしかったら、ぜひ!


『運命の11着を選べると女の人生は動き出す』MALIKA・著 サンマーク出版 【選書・ファッション】

【ブログ新規追加460回】

持ってはいるのに、着る服がないー

それは、次のステージへの扉に立っている証。

服と人生は、密接につながっているから。

服を変えるとき、最高の人生が動き出す。

さぁ、心の準備はいいですか?(本書奥付より)

運命の11着を選べると女の人生は動きだす』MALIKA・著 (サンマーク出版)

• 簡単レビュー

あなたが選んでいる「好きな服」が一番「似合う服」とは限らない。本書は、本当に似合う服を知りたくなった大人の女性のために書かれた一書だ。

持っているのに、着る服がない・・・そうため息をついたことは誰にでもあるだろう。

本当に似合う服って?ちゃんと知りたいし、似合う服を着たい。

そう感じたら、この書籍では新しいステージへの切り替え時期に遭遇しているのだそうだ。

なぜなら、服と人生ってとても密接につながってるからだと著者はいう。

しかも、どんな服を選ぶかで、どんな未来がやってくるかが決まる。「それって本当?」と、思ったあなたにこそ読んで欲しい一書なのだ。

著者のMALIKA氏は、東京銀座を拠点にして、本当に似合う服をアドバイスする「服選びの達人=ファッションアドバイザー」だ。

その服選びは、「骨格診断」でその人の骨格タイプを見究めて、似合う服を提案するという。

アドバイスを受けた数々の女性から「彼氏ができました!」とか「仕事で認められました!」など、似合う服をまとった女性からの成功体験が続々と上がってきてるのだ。

本書では、MALIKA氏の骨格診断をはじめとするテキストに沿ったMALIKAメソッドが網羅されている。

自分の骨格を知るだけでも充分に価値のある一書だ。

そして、それぞれの骨格にあう「運命の11着」を紹介していく。11着を効率よよく着まわすコーディネートも多数あり読み物としても実用的。

さあ、もうすぐおしゃれの季節「秋」

人生を変える服選び、ぜひ、あなたも体験してみて!

• もくじ

似合う服とは、その人がもっともセクシーに見える服

小柄さんにロングスカートはNGはウソ。思い込みが似合う服を遠ざける

センスがいい人でも、一番似合う服を着ているとは限らない

筋肉のつきやすいメリハリボディのストレートタイプ

厚みがなく華奢な印象のウエーブタイプ

骨太な印象のナチュラルタイプ

ストレートさんの運命の11着

ウエーブさんの運命の11着

ナチュラルさんの運命の11着

一番似合う服で私らしさを楽しむ10のコーディネート

一番似合う服だけで理想のクローゼットをつくる7つのルール

秋を迎える準備をはじめた~今、本当に必要な服だけでクローゼットを作った話

もうすぐ秋到来。

わたしは、この本をザっと読んで、自分の骨格もだいたい分かったけれど、もっとも惹かれた部分が最終章の「理想のクローゼットをつくる」という部分だった。

今週、土・日で「もう絶対に着ない服」「傷んだ服・靴・小物」をすべて処分した。

それが、加速して家中の収納を今一度点検した。

もう使わない家具や小物。近くのショップで引き取ってもらった。もちろん衣服も。

そして、空いたスペースに今のわたしに必要な服やバッグ、靴や小物をすべて集結させた。

できあがった今のわたしに必要なクローゼットとは、ほぼ、「山・トレッキング」のための服や靴・小物だった。

おしゃれというよりは登山に適した機能を持つものばかりだ。

これまで、ウエアも普段着るTシャツと一緒にしまっていた。ダウンだって、通勤コートと一緒。

そういった同混を一切やめたら、思いのほか素敵なクローゼットになったの。

とにかく、かなり捨ててすっきりしたし、今一番やりたいことに通じるファッションだから、当然熱も籠るってわけ(笑)

で、そんな片づけをずうっとやっていたら、昔、買った「L,L,bean」のバッグパックが出てきた。上高地で使ってからずっとしまい込んでいた。

もう一度使ってみようかな・・・。で、これはお取り置きした。

生き方も好みも長く生きてくれば変わって当然だ。

もう、次のステージに移ったわたしが取った行動は「今一番必要な衣服や靴・小物を一堂に集めたクローゼット」を作ったという話。

これ、意外といいかも。

素敵な自分らしいクローゼットがあるだけで気分がいい。

全部まとめてあれば、「あれがない!」と、探し回る必要もなし。

物忘れが気になるには早いけどね(笑)

『騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編』村上春樹・著(新潮社)【選書・文化】

【ブログ新規追加450回】

一気に読んでしまった。

これまでの村上作品と比べて、遥かにモノゴトについての説明や登場人物についての情報が多く、わたしが思う「読者を置き去りにしない」秀逸な作品と言える。

小説を読むうえで、わたしが必要としているのは、伝えたいことについての説明や情報が詳細でなくとも、ある程度提供されているのを重要視している。

これまで数えきれないほど小説を読んできたから、内容が薄く書き手の勉強不足を補うリカバリーな文章表現にはもう騙されなくなった。

村上氏のこれでもか!という「ミルフィーユのように積み重なった膨大な勉強量」と「納得の行くまでゴリゴリと手直しされたであろう推敲のこん跡」が垣間見えるエンターテインメント性の高い芳醇な作品だ。

ああ、村上春樹氏ってどこまでも読者思いだったんだと改めて気が付いた(驚き!)

で、もったいないので、小説のレビューはよそう。できることなら読んでみてほしい。

簡単なあらすじだけ書き示しておく。

騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編

これは、36歳の男性画家(肖像画専門の画家)の話だ。結婚6年目にある日突然妻から「あなたとはもう一緒にやってはいけないから」とだけ言われた。

その日の内に画家は車で東北方面へあてもなく放浪の旅に出ていく。

2ヵ月ほど北の街を放浪したが、もう飽きてしまい画家仲間の友だちにいきさつを電話した。

友だちの提案により、友だちの父親(有名画家)が所有する小田原の別荘で暮らすことになる。

そこから、奇妙な事件やら問題に引きずり込まれていく。

キーワードは別荘の屋根裏に隠すように置いてあった、「騎士団長殺し」という名前のついた大型の絵画だった。それは有名画家が「ある問題」を明らかにするために描いた絵画らしい。

主人公画家は、このピカソ作ゲルニカを思わせる絵画の持つ秘密を暴くつもりはなかったが、どんどん不思議とも言える人物や現象に巻き込まれていく。

例えば、いわくつきの中年男性の依頼を受け肖像画を書く案件とか、なぜだか夜中に鈴の音が規則正しく鳴り響くとか、怪しい石室の存在など毎日がサスペンス極まりない状況を冷静に分析する主人公画家。

謎だらけの話がさらに謎を生む。

そんなある日、イデアが突然顕れる。

イデアとは、プラトンが生んだ哲学だ。

「見る」という動詞(idein) に由来する。元々は「見られている」ことを前提とした「姿」「形」を表す言葉である。

作品中、時おり主人公の前に姿を顕す身長60㎝のイデアは、まさに「騎士団長」の出で立ちをしていた。

イデアが顕れるようになってからは、不思議な現象にも説明がつき、いつしか現実でも非現実でもモノゴトは進んでいくし、まったく怖いものではなくなっていった。

しかもイデアは予言ができる。

この予言に従う主人公画家の行く末は・・・。

               ★

「第2部 還ろうメタファー編」では、主人公画家とイデアが遭遇する新たな局面(解決すべき問題)をどうやって乗り越えるのかが超楽しみだ。

第1部、第2部で1000ページにも及ぶ超大作。それを一気に読ませる村上氏の筆力には脱帽する。

※8月18日夕方の月

騎士団長の放つ名言に「目に見えるものが現実だ」「しっかりと目を開けて見ておればいいのだ」「判断はあとですればよい」と。

村上氏には珍しい、モノゴトの収束をさせる場面も多数あり、この作品は第3部が続編で出されるだろうと、多くのハルキストの話題となった記憶がある。

そうね。第3部が出たらぜひ、読みたい。

どうか、村上氏、煙に巻かないで・・・(笑)

※ 騎士団長のモチーフは、モーツアルト作オペラ「ドン・ジョバンニ」の名場面「地獄落ち」からだそうだ。

まず、タイトルありきの作品となった。




『ナイルパーチの女子会』柚木麻子・著(文藝春秋)【書評・文化】

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ねえ、ナイルパーチって魚知ってる?

スズキ目アカメ科アカメ属の淡水魚。淡泊な味で知られる食用魚だが、一つの生態系を壊してしまうほどの凶暴性を持つ。要注意外来生物だ。

回転ずしで使われている大半の白身魚は偽装魚である。偽装魚とは、味や調理によって使い勝手のよい安価な食材になり変われる代用魚のことである。

例えば、真鯛→ティラピア、ひらまさ→ナイルパーチ、あいなめ、えんがわ→アメリカナマズ などetc (資料先 / 回転寿司店はアメリカナマズとナイルパーチを大半の白身魚として出す)

ナイルパーチの女子会』柚木麻子・著(文藝春秋)

第二十八回山本周五郎賞&第三回高校生直木賞作品だ。

女の友情とはいったい何なのか?を描いた問題作。(2015年3月発刊)

• あらすじ

父親と同じ大手商社でバリバリ働く主人公(志村栄利子・30歳・独身)海外出張も多く多忙な栄利子のひそかな楽しみは、主婦ブロガーおひょうさん(丸尾翔子・30歳・既婚/夫と二人暮らし)の書く「ダメな主婦日記」を毎日読むことだ。

おひょうさんの紹介する回転寿司やコンビニパンやお菓子の新商品を買い込み食べながらブログを読むのが楽しくて仕方がない。

キャリアウーマン栄利子とは全く違う平凡な主婦おひょうさんのどーでもいい日常を垣間見て、それはそれはいいストレス解消になったのだ。

いつしか、おひょうさんのブログの熱心な読者となる。

さらにおひょうさんが栄利子と同じ街に住んでいることを突き止めた。

その後、ブログで知ったおひょうさん行きつけの店で二人は偶然の出会いを果たしそこから意気投合する。

しかし、それは偶然ではなく、栄利子のストーキング癖によって実現した出会い。

一旦は意気投合した二人だったが、おひょうさんは栄利子の執拗な待ち伏せに辟易し、彼女をストーカーと認定する。

女同志の蜜月は予想以上にあっけなく破綻した。

それは、他人との距離をうまくつかめない栄利子の一挙手一投足が原因でおひょうさんを遠ざけてしまったのだった。

だが、執拗におひょうさんに執着する栄利子は、まるでストーカーまがいの行動に度々打って出てしまう。

昔、中学生時代にも、幼馴染みの圭子から疎ましがられたことが許せず、ストーカーじみた行為を起こし、信じられない噂(圭子が援助交際しているというウソを流す)となって圭子の将来を潰した経験を持つ栄利子なのだ。

普段は、美しく優秀な商社勤めのOL栄利子。しかし、自分が避けられたり受け入れてもらえなくなったりすると逆上し、相手を食い尽くす狂暴な癖を持っていた。

まるで、偽装魚のナイルパーチみたいだ。スカンジナビア湖にたった一匹のナイルパーチを入れた時、あっという間に湖の生態系がナイルパーチの食い荒らしにより変わってしまったのだ。

商社でナイルパーチの輸入に携わる栄利子はナイルパーチの生態を勉強し、まるで女同志の友情のようだと反芻した。

何がなんでも、おひょうさんは私のものだと言わんばかりにストーキングを繰り返す栄利子はまるで狂暴なナイルパーチそのものだ。

執着する栄利子は悩みを相談した同僚の男と寝たことが婚約者の派遣女子・高杉真織にばれ、とんでもない約束をさせられてしまう。


一方、おひょうこと翔子も実家に問題を抱え――。

作家である重松清氏の解説・・・「本作『ナイルパーチの女子会』は、柚木麻子さんがデビュー以来追い求めてきた主題の一つの到達点であり、その後の柚木さんが展開する文学への結節点でもある。」

• 読後感

同性の友だちができない栄利子と翔子。ブルーの表紙、ふわふわしたイラストからはまったく想像できない女のドロドロ執着劇だ。

かなり狂気の世界なのに、誰にでも経験のありそうな女の「取った,取られた」から始まる当たり前の日常を巧みな言葉で表現する柚木麻子氏。

身近でありながら、登場人物たちが言葉を荒げる様は狂喜じみていて、何度も途中で読むのを止めようと思わせるが、結局栄利子と翔子の近々の将来が知りたくて最後まで読んでしまった。

ストーキングや社内いじめや家庭内介護のすさまじさなど、恐ろしくもあり身近でもある内容に目が離せなくなってしまったのだ。

女の持ち合わせている深層心理をえぐる内容が息苦しい。この作品を再度読み返そうとは思わない。

普通の女子がサイコだった話。

最終盤に差し掛かる頃、付きまとわれていた翔子も同じように、NORIという女にストーキングしてしまう。

誰もが栄利子になりうるのだ。

それまで、築き上げてきた世界をいとも簡単に崩す怖ろしい女の狂気劇だった。

もう、当分は回転寿司店へは行けない(笑)

「心がえぐられすぎてつらい」

多読を楽しみ切る夏季休暇~多読の達成感はやりがいに効く【書評・自己啓発】

【ブログ新規追加446回】

本は一冊、一冊慎重に選んでじっくり読む?

それとも出会いを大事にしてインスピレーションのままに手に取る?

どちらも素敵。

だって、本さえあれば、いつでも新しい世界を見る(妄想)ことができるし、孤独を存分に楽しむ最高の時間になるから。

今日は、そんな最高の読書の話をすこし。

わたしの本とのつきあい方を語る。

わたしは多読=ブックジャンキー(本狂い)だという話

私の読書法は一度に大量の本や雑誌、新聞などを横に積んで、一定の時間でどんどん読み続けていくことだ。

今では、雑誌は姿を消した。その代わりWEBの記事を読み続けるので常にPCは立ち上げている。

何か気になる情報があれば、すぐに検索するし、You Tubeは消音して観たい所だけを拾う。

今や、「多読」と言ってもその姿は、紙の書籍だけを指すのではない。WEBも動画配信もすべて多読に含まれるのだ。

長期の休みに入る前、図書館で10冊の書籍を借りる。今回の内訳は小説4冊、アウトドアに関する書籍を2冊、健康やファッションなどを4冊借りてきた。

で、休暇2日目の今日から、村上春樹・著『騎士団長殺し・第1部 顕れるイデア編』『騎士団長殺し・第2部 還ろうメタファー編』を朝から大雨の中、粛々と掃除、洗濯をしてずっと読んでいる。

休み中に読み切って、書きたくなったら書評を書くかも。無理はしないのん(笑)

とまあ、図書館通いは通常でも毎週やっている。今では借りる本も少なくはなってきたが電子書籍も2冊はオンラインで借りている。

本当に欲しいものはサッと迷わず購入する。

出版社の営業だから本の世界に一年中どっぷりなわけで、情報量もそりゃあ断然多い。しかし、大事な情報を見抜く目を持っていないとたちまち情報の波に押しやられてしまう。

今の自分に必要な視点だったり、思考だったりを必要としているゆえに、あれもこれもと触手を伸ばすこともなくなった。

「多読」は、無数の考え方の一端を知り、取り入れたりしながら「自分らしく生きる指標」となってきた大切な習慣なのだ。

お菓子を食べながらいっぱい読んでインプット。冬眠前の熊みたいなもん(笑)

貯めるだけ貯めて一気に吐き出すアウトプット。その場所はこのブログだけで充分だ。

誰の真似でもなく、誰とも戦わない、わたし独自のやり方(インプットとアウトプット)が「多読」と「ブログに書評を書く」ことなのだ。

読書は読み終えて、ブログにまとめて落とし込むまでが一連の行動で、思い通りに書けた時の達成感は何ものにも代えられない醍醐味がある。

多角的発想と詰め込んだ知見がわたしを豊かにしてきたのは間違いない。

「いっぱい読んで、いっぱい吐き出す」

これでいつもスッキリ(笑)


           

『働かないの』群 ようこ・著(KADOKAWA)【選書・ワークスタイル】

【ブログ新規追加445回】

主人公 キョウコ 48歳。無職。月10万円生活(貯金を切り崩す)。独身。

都内のおんぼろ木造アパートに気のおけない女たちとつかず離れずに自由に暮している。

働かないの~れんげ荘物語

簡単レビュー

2009年の第一作から3年後の2011年3月キョウコは48歳になった。まだ、独身。ひとりでれんげ荘に住んでいた。

2011年3月といえば、東日本大震災が起った年。作品でもおんぼろ木造アパートのれんげ荘は地震にも倒壊しなかった。管理会社社長はほんとにいい人で、木枠の窓をアルミサッシに変え、窓枠にはめ込むタイプのエアコンまで無償で取り付けてくれた。

そのおかげで、おんぼろアパートだが確実にキョウコの生活もグレードアップしていた。

隣りの部屋に若い女性が越してきたので老婆心であれやこれやと世話を焼いてしまい苦虫を噛んだり。

喫茶店で見かけた細かく美しい刺繍バッグに魅せられて刺繍を始めてみるが、持ち前の完璧主義が邪魔をする。

それは、何でもできる!と、思い込んでいたが実際始めてみると、針の一刺しすら思い通りに刺せない。

要するに若い頃と違い、目が悪くなっていて、針を持つ手もプルプルと震えてしまうのだ。

あれほど完璧主義だったキョウコ。ぐうの音も出ない。

いったい一つの作品を仕上げるまでにどれだけの時間がかかるのだろうか。

一方でこれから、趣味で本格的な刺繍を始める人にとってはとても興味が尽きない内容だろう。

そして、キョウコの夢はこうだ。

長い間、仕事だけをしてきた。それも早期退職を夢に見続けて。「誰にも気兼ねせず、好きなだけ寝て、好きなだけ食べて、好きに旅して」と。よ~するに何もしない、働かないために45歳まで、必死で働いてお金を貯めてきたんだから。

そうそう、働かない(無収入)で独身って場合は、所得税や住民税が発生しないのだ(驚き)

そうすると、年に何度か役所の担当が「お前もちゃんと働け!」「税金を納めろ!」と、言わんばかりに家庭訪問に来る下りが面白い。

キョウコの言い分はこうだ。

「御用は何でしょうか?年金と保険料は支払っていますが」

(なぜ働かないのか?と聞く役所担当に向かって)

「ですから、以前も申し上げた通り、働く気持ちはありません!」

(役所担当ははあ~と、ため息)

このやりとりがえんえんと続くのだ。例えば「どこか具合が悪いのか?」とか「まだ働ける年齢でなぜ、仕事をしないのか?」」など身辺調査に躍起になる役所担当。

彼の使命は、キョウコに再就職してもらって、区民税を払ってもらうという納税者増加の一端を担う者なのだった。

キョウコは、ひたすら自由を求めて、仕事を続けて貯金を貯めて退職できて晴れて自由になった。

しかし、世間はそう簡単にはキョウコを自由奔放にはさせてくれないものなんだ。

月3万円のぼろアパートに住んではいるが、お昼だって、都心の高級スーパーのセールで手に入れたアンチョビや紅茶と新鮮野菜も八百屋で買い、安くておしゃれなひとりパスタランチを楽しむ。

ランチの後は、日がな読書するもよし、好きなピアノ曲を聴くのもよし。アパートの女住人たちはみな総じて優しいのだ。

これで、生きて行ければ何もいらない。

いらないついでにTVも捨てたのだ。要らない情報の呪縛から逃れるためだそう。

時おり、「何かやらなきゃ!」と焦る気持ちもあったが、3年も無職を続けると、あれだけ自己嫌悪に鬱々していたことがウソのように穏やかな日々に満足している。

働かない!と、決めた女の強さも端々に見える。

ただ、2011年という具体的な数字を作品に見つけた時は、まるでおとぎ話を読んでいたはずだったが、否が応でも現実に引き戻されてしまった。

このあたりが、「群ようこの狙い」だったのかもしれない。

何にも起こらない日常でも、びっくりするような現象に遭遇するのだから。

平凡な日常を嘆いたりせず、身近な人を大事にしながら、ひたすら「ご自愛」をする提案を作品を通して続けている。

コロナ禍の今、ステイホームのお供に「群ようこ」にハマるのも悪くないだろう。

                ★

群 ようこ氏の作品はこれで2作目。

1作めは「かもめ食堂」・・・北欧でひとりの女が手作りシナモンロールやシャケのおにぎりを作りcafeで売り出す、実に靜かで素朴な話。

原作を読んで映画を観て、日本から一番近いヨーロッパに行きたくなった作品だった。

ただ、あまりに情報量(セリフや場面)が少なすぎて物足りなかった。おしゃれなんだけどね。

作者はわたしより7歳年上。バブル期を謳歌した年代だ。しかし、大人気作家となっても自身の慎ましい暮らしぶりは変わらなかったそうだ。

群 ようこ氏「人となり」を知るには「かもめ食堂」や「れんげ荘物語」を読むのをおすすめする。

何でもない日常を愛おしく感じられるようになるから。

手元にあるもので楽しむ能力が人生を豊かにする~コミック『こづかい万歳』を紹介🎶【選書・こづかい制の文化】

【ブログ新規追加435回】

「おこづかい」って子どもの時の最も大切な精神安定剤だった。働かなくてもお金が手元に入ってくる。

そうそう、お正月の「お年玉」もおんなじ。子どもならではの稼げる最高の習慣じゃあないだろうか。

そこへゆくと、大人となってからは、しっかり労働した対価がお金となって入ってくる仕組みを持つようになる。まったく意味合いは違うが毎月のお給料日は、子ども時代とは比べ物にならないほどの精神安定剤となっているはずだ。

せっせと働く夫が毎月働き終えたら、妻からもらう?「おこづかい」この制度も普遍なものなのだな。

汗水たらして働く夫。それを愛する家族ができたら、お給料、全部丸投げできちゃう。

日本人男性のそういう部分は本当に凄いし何よりその精神が尊いし有難い。

一方、年金の話だが、年金もいわゆる「おこづかい」的なイメージがどうしてもぬぐえない。

ま、それまでの人生の積み立てをきちんとやってきた人に渡される「ご褒美」なのだ。だから労働のイメージが湧かなくても当然だろう。

                 ★

さて、話は戻り、「おこづかい」をもらう旦那さんたちの使い方に注目したコミックを紹介しよう。

こづかい万歳』モーニングコミックス / 吉本浩二・著

簡単レビュー

「おこづかいもっとチョーだい!」

と、口ぐせのように叫んでいる漫画家の吉本氏が自らの自伝として認めた作品『おこづかい万歳』

作家、45歳。

毎月、低額?定額と言い直そう。2万1千円。これが作家の「おこづかい」だ。

その中から、執筆のお供の大好きな「お菓子」を何と、1万円近くも使い、あと半分の1万1千円は内緒の内緒だ。

ともすると子どもにおもちゃをねだられたりすればアウト!この楽しくも苦しい「おこづかい」の使い道や、悩ましく、いじいじと悩む「おこづかい」の攻防戦。

全国の「おこづかい生活」を営むすべての定額夫さまに送る、大人の「おこづかい」マンガなのだ。

               ★

こち亀」を思わせる画風と、「孤独のグルメ」を思わせる「おこづかい」の攻防戦や他人のもらっている金額の取材が非常に面白い。

『こづかい万歳』で取材を重ねる主人公。

その金額に、その使い方に、そのつど惜しみない共感が溢れ出る。

ああ~、みんな同じなんだ。

しかし、中には「おこづかい0円」という強者までいた。いったいどうやって毎月しのいでるのだろう?

その0円亭主は、上手に今ある物で楽しく暮らせているようだ。要するに人生の達人ってワケだ。

                 ★

えっ?ちょっと待って!わたしもそういえば「おこづかい」なんて自分にあげていないわ!

年金だって、まだまだだし。あるとすれば、小さなアドセンスの収益や印税などがこれに当たる。だから定額ではない。

しかし、「おこづかい」のないことに不自由はしていない。気づいてもいないもん(笑)

趣味が仕事とブログ執筆と写真。カメラも夫がくれた一眼だけ。体力づくりに低い山を歩くとかだ。別段お金のかかる趣味もサークル活動も持っていない。

そうか!わたしも0円仕事人主婦ってワケ。

そうそう、わが家の夫も「おこづかい制」で長年やってきたが、ポイント貯めるのが得意で、ほぼポイントで何でも賄っている。ポイ活上級者なのだ。

今や、現金をただ使うよりも、カード払いにしてポイントを貯めるのがいい感じ。

現代になっても一家の「おこづかい制」の概念だけはしっかりと根づいてる日本。

どう?

人の「おこづかい」知りたくなった?(笑)

『ピンチに慌てず、チャンスを創る~82のゴールデンルール』大串亜由美・著(ファーストプレス)【書評・ワークスタイル】

【ブログ新規追加434回】

ピンチに慌てず、チャンスを創る~82のゴールデンルール』大串亜由美・著(ファーストプレイス)

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• 書籍概要

「自分らしく」仕事をするには?

そして周りから「選ばれ続ける」には?

そこにあるのは思考の到達点だ。

「一番」と「一流」の違いとは?

「一番」と「一流」の違いを、明確に文章で表現された。

この違いを知るだけでもこの書籍を手に取った価値があるだろう。

著者・大串亜由美氏は大手外資、国内企業を中心に9年連続で研修を250回以上続ける「常に選ばれる」アサ―ティブコンサルタントだ。

アサ―ティブ第一人者の著者・大串亜由美が、一歩先に進むため、成長するためのゴールデンルールを紹介する。

そこには「本物」の仕事をするための秘訣がある。

                 ★

目次

自信を持って仕事をする-一流の条件
1 目指すのは一流
2 一流になるのに、才能は要らない
3 “ I am perfect as I am. ”
4 最後の最後まで、手を抜かない
5 できない無理はしない

1週間で大きく変わる-一流の仕事術
18 月曜日の朝は、いつもより早く出社する
19 手ぶらで行かない、帰らない
20 アジェンダを〝動詞形?にする
21 ミーティングはイベント。仕込みが肝心
22 即・短・心

「自分らしさ」を磨く-一流の見極め
49 走らない
50 「次の人」への配慮
51 割り込み厳禁
52 「忙しい」は、かっこ悪い
53 オフィスで寝ない

印象に残る「自分」を創る-一流の見た目
60 「見た目」が中身
61 プロとしての身だしなみ
62 袖丈1センチ
63 「自分らしさ」を人に訊いてみる
64 小物に統一感

選ばれる「存在」になる-ピンチとチャンスの活かし方
69 ピンチな時は、角度を変える
70 判断する時は、高さを変える
71 「できない」「わからない」はチャンス
72 「プラスα」で挽回
73 失敗を引きずらない

「自分らしさ」を活かす7つのヒント-「合格」から「一流」へ
1 配慮はするけど、遠慮はしない。
2 過去は引きずらないけど、忘れない。
3 簡単に諦めないけど、無理もしない。
4 芯はあるけど、頑なにならない。
5 誰に対してもベストを尽くす。
でも、全員から好かれることを求めない。

                 ★

一番と一流を言葉で表現するとこうなる

一番とは→常に他人との競争がある「相対的評価」が一番。

一流とは→誰とも比べない独自の「絶対的評価」が一流。

これでわかるのは、目指すべきは「一流」であるということだ。一流を目指すとは、己を磨くことに他ならない。

目先の誰かの行動や成績に囚われることなく、自分の「生き方」「働き方」「楽しみ方」をどんどん、成長させて行こう。

そうするうちに「一番」とかは勝手についてくるかもしれない(笑)


燃え尽きたいと望み叶わなかったボクサー・栄光の背番号3によって消えた三塁手/勝負の世界に何かを賭け喪っていった者たちの物語『敗れざる者たち』沢木耕太郎・著【選書・文化】

【ブログ新規追加426回】

オリンピック5日目、アスリートの誰もが、喉から手が出るほど欲してやまない金メダルを早くも掴んだ選手がいる。

一方で、なぜだか、不安が的中した・・・という金メダル候補、まさかの予選落ち。

それぞれの戦いが明暗を分け始めたオリンピックの晴れ舞台。

TVで観戦する側もハラハラドキドキしつつも、アスリートたちがコロナ禍の中どんな思いで戦ってきたのであろうかと、心中を察するあまり「すべての選手が全力を出し切って戦える」ようにと、願ってやまない。

そんなスポーツ一色の中、ずいぶん前に図書館で予約をしておいたノンフィクション作家でありスポーツライターである沢木耕太郎氏の著書『敗れざる者たち』が届いた。

さっそく、オリンピック中継を観ながら読み始めた。

敗れざる者たち』沢木耕太郎・著(文春文庫)

もくじ

1、クレイになれなかった男たち

2、三人の三塁手

3、長距離ランナーの遺書

4、イシノヒカル、おまえは走った

5、さらば宝石

6、ドランカー(酔いどれ)

                 ★

読後レビューする。

               

『敗れざる者たち』見事なまでに名著である。

実在の人や動物(馬)による実話を、著者 沢木耕太郎氏の手にかけると、まるで魔法がかかったみたいに、活き活きとした作品に仕上がるのだ。

それぞれのアスリートたちの戦い切った後の姿が爽やかなこと、この上ない。また、著者自身がその気持ちに浸り切った文章に圧倒されもする。

ここでは確かに、ボクシング、野球、競馬、マラソンで華麗にチャンピオンとなり一流と呼ばれ頂点に立つことが「叶わなかった」アスリートたちの、「報われない」競技人生がこれでもか!と描かれている。

しかし、敗者の気持ちに浸り切った著者、沢木耕太郎氏の描くアスリートには微塵たりとも暗い影はない。

あるのは、無冠の帝王とも言える「終わった者たち」の清涼感だけだ。

これは、いったいどういうことなのであろうか?しばし、本を置いて考えてみた。

そして、かすかだが答えを導き出せた。

それは、沢木耕太郎氏の描くアスリートは、その人本来の持つ人生を「生き切る」ことに「夢中」だったのだ。

著者は「夢中」さをコアに戦いを描き切った。

そこには感動秘話や涙も汗もすべてを飲み込んで戦ったアスリートの昇華した姿があっただけだ。

「夢中」はすべてに通じる魔法なのかもしれない。

                ★

今朝、近所のヒマワリ畑に撮影に行った。

まだ7月だというのに、すでに花びらを枯らしたヒマワリも多く驚いた。

しかし、その横には、すくすくと太陽を浴びて伸びる真新しいヒマワリたちの姿もあった。

花の世界も戦いのまっただ中。 まさに「光と影」だ。