『大人の作法』山本益博・著(KKベストセラーズ)【選書・文化】

【ブログ新規追加632回】

先日のブログで、潔癖症には気をつけて!というユルい話を書いたところ、ある方から「マナーとルール」の話を書いて!と、打診された。

マナーとルールだったら、この人がピッタリじゃないか?と思い立って探し出したのがこの本だ。

で、早速読んでみたら単なるマナーやルールを認めたテキストではなかった。

「師弟を持つ人生の素晴らしさ」と「師匠から学んだ数々の文筆に対する講釈」や「文楽などの日本文化や教養を徹底的に叩き込まれた学生時代」これらの人生に通づる生き方を、「師から教わったことを師の教え通りに文章で伝えて行く」というライフワークを確立して来た素晴らしい書籍だったのだ。

ここで、著者・山本益博氏について簡単に紹介しよう。

1984年、東京浅草生まれ。早稲田大学第二文学部演劇科卒業。卒論「桂文楽の世界」を卒業時に「さよなら名人藝」(晶文社)から初出版された。

その後、「東京・味のグランプリ200」(講談社)を出版する。以来、食に関する著述、講演、TV、ラジオ出演多数。

山本氏は、料理を作る研究家としてではなく「料理評論家」として、外食の持つ本来の楽しみ方を世間に広く伝え続けてきた。

わたしの山本益博氏の印象は、日本の懐石料理や高級フランス料理など美味しいものをただ美味しく食べるだけではなく、文章を読んだとたんに、その料理が本当に美味しいんだ!と伝わる文章表現を極めてきたことに、大変な熱意だと感じたのを今でも覚えている。

しかも、すべての料理を現地で頂きレポートの数も物凄い。単なる食通ではない、経験に裏付けられた言葉選びからにじみ出る確かな説得力。実際に現地へ出向き、頂いてきたからこその堂々たる振舞いが文章の上でも踊っているんだ。

大人の作法』山本益博・著(KKベストセラーズ)

著者の山本益博氏は、完全なる団塊の世代だ。山本氏が言うには、「団塊の世代の特徴は「師」を持たないことだろう」と言ってのけている。

それはなぜか?と言えば、団塊の世代には、上の世代や古い価値観を否定することによって、自らの存在意義を証明せんと、してきたところがあるからだと述べられている。

青春時代が60年代から70年代前半だったからだとも。全共闘世代であり、学生運動が盛んで結婚しても核家族化が進んで、親世代の干渉を避けてきたのだとも言われた。

この風潮にあっても、年長者を否定するどころか、山本益博氏は先輩や師にどんどん教えを求めて行く。世間的には「落第生」だと言われつつも。

そんな、年長者になぜ、長年教えを請うて来たのか?

それは、師の師たる「言葉」と「立ち振る舞い」に惹きつけられたんだそうだ。団塊の世代が失ってしまったものがそこにあったんだと。

最後に。

「男の品性は食に表れる」という章を読んで。

美味しいものを美味しく食べる・・・当たり前じゃん!?

では、美味しいものを本当に美味しく食べているか?この微妙な1点を明確にするために書いたのがこの『大人の作法』なのだ。

美味しいものを食べたければお金の力を使えばいい。しかし、それでは胃袋をただ満たすだけだ。

美味しいものをきちんと美味しく頂くための極意、それは「食卓にある」と言い切る。

本書では、山本益博氏のオリジナルな考えはまったく反映されてはいない。彼を育てた素晴らしい先達の言葉を紡いでできている。

「言葉よりも行動で教える」先達。そこから「作法は行動だけでなく言葉で残す」と、山本益す博氏。

使命は「次の世代への継承」なのだから。


“『大人の作法』山本益博・著(KKベストセラーズ)【選書・文化】” への2件の返信

  1.  「冷え冷えと 洗濯回す 余寒時」 清流子
     数年前から我家の洗濯機は調子が悪い。自動車黎明期の頃、フロントについていた回転式エンジンハンドルのごとく、早朝、洗濯槽の回転盤を回してモーターを更かすのが冬の風物詩である。
    状況や状態で臨機応変に変化させる必要がルールにはあるね。

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