『本を読む人だけが手にするもの』藤原和博(著)~本を読む人・そうでない人の階層社会【書評・文化】

【ブログ新規追加371回】

「これから先の日本では、身分や権力やお金による階級社会ではなく、本を読む人とそうでない人に二分される階層社会がやってくるだろう」本書、奥付より抜粋

『本を読む人だけが手にするもの』藤原 和博・著(日本実業出版社)

【本書レビューと雑感】

本書は、「なぜ、本を読むといいのか?」について考える本である。

わたし達は、子どもの頃から、親や学校の先生に「本を読みなさい!」と言われてきた。

しかし、「どうして読まないといけないのか?」「読むといいことがあるの?」など、疑問がいつでも沸き起こっていた。

「どうして本を読むのがいいの?」と、子どもに正面から問い返されたら、あなたならどう答える?

・・・理路整然と、答えられる大人はなかなかいない。

そもそも、子どものころに親や先生に言われて「何となくいいから」で、本を手に取ってきた幸運な人はそれで万事OK。

厄介なのは、親や先生から読書を勧められ過ぎて、イヤになった人だろう。そういった読書に苦い経験を持つ親は、そう簡単に子どもに本の必要性を伝えるなんてまず、無理だ。

そうした、本についてビターな経験を持つ方にぜひ、手に取って頂きたい本である。

この本では、いわゆる「速読術」や「読書法」などの読み方スキルについては一切書かれていない。

書かれている本筋は、「読書で人生を磨く」これに尽きる。

現在、コロナ禍で外出を控える人が増え続けている。毎日書店営業に出ているが、お客様はかなり戻ってきている感じ。

長い自粛生活では、食料の次に本が必要とのデータもある。皆、本を求めているんだ。こんなグレーの時代を生き抜くために本は不可欠な存在なのだ。

本書で読書や本について深く考えるきかっけになってもらえれば幸いだ。

                 ★

【本書概要】

本書は、東京都の義務教育では初となる民間企業出身の校長を務め、現実社会と教育をリンクさせた「よのなか科」という大人気の授業や、ベストセラーで知られる藤原和博氏が、「人生における読書の効能」について語る。

目次から、要点をひも解いてみよう。

• 序章「成熟社会では本を読まない人は生き残れない

現代は「本を読む習慣がある人」と「そうでない人」に二分される階層社会になりつつあると警告。

• 第1章「本を読むと、何が得か?

「読書量と収入の密接な関係」「読書によって身につく、人生で大切な2つの力」など、読書のメリットを答えていく。

• 第2章「読書とは「他人の脳のかけら」を自分の脳につなげること

「1冊の本にはどれほどの価値があるのか」「本を読むことは、2つの『みかた』を増やすこと」など、本を読むことの本質に迫る。

• 第3章「読書は私の人生にこんなふうに役立った

「自分の意見をつくり上げるための読書」「読書で人生の鳥瞰図を獲得する」など、人生と読書との関連性がリアルに綴られていく。

• 第4章「正解のない時代を切り拓く読書

21世紀の成熟社会に不可欠な「情報編集力」とそれを構成する5つのリテラシー「コミュニケーションする力」「ロジックする力」「シミュレーションする力」「ロールプレイングする力」「プレゼンテーションする力」を、いかに読書で磨いていくかを解説。

• 第5章「本嫌いの人でも読書習慣が身につく方法

読書嫌いの子も少なくなかった中学校の校長時代の経験なども踏まえ、いかに読書を習慣化させるかを、現実的な側面からポイントを押さえていく。

• 巻末「藤原和博の「これだけは読んでほしい」と思う本・50冊

ビジネスパーソンに読んでほしい14冊」「学校では教わらない現代史を学ぶ10冊」「小中学生から高校生の子を持つ親に読んでほしい15冊」「子どもといっしょに読みたい11冊」という著者のおすすめ本も紹介している。

                  ★

久しぶりにがっちりと書評を書いた。3年のあいだレビューライターを兼業でやっていた頃の自分を回想した。

当時のわたしは、朝5時~7時をブログ執筆、7時~9時を一日分の家事、9時~17時を本業で外出、17時~21時を夕食、風呂(団らん)、21時~23時をブックレビュー執筆、その後就寝。

これでみると、執筆と言える部分は朝の2時間と夜の2時間の計4時間。少ないような丁度いいような。絶妙なバランスかもしれない。

2時間あれば、一本書けるし、推敲もわりと丁寧にできる。しかし、ブックレビューを書く場合、対象本の熟読が必須だ。

では、その熟読をど~していたのか?

それは、一週間で多い時は5冊のブックレビューを書くため資料は前もって届けてもらって、前週の土・日にはすべての本をざっと一読みして、キーポイントを見つけて付箋をつけておいた。

キーポイントに貼った付箋を手引きに、毎日一冊づつ書き上げて行く。そしてすぐに納品せず、5本書き終わったら土・日に全部推敲し、文章のアレコレを精査して翌日の月曜日の朝に納品。

そして、納品後、午後には次の5冊の指示(次書いて!)が届くので、同じルーティンで書き始める。

この方法で、3年間で250冊ぐらいのレビュー記事を書いた。

と、書き出してみたが、どこにも熟読していた形跡はない(汗)

年間、約300冊を読書してきた習慣が役に立った仕事だった。暇さえあれば、いつでも本を読んでいる生活だからできた仕事だね。

今では、ブックレビューもこのブログで書くだけで、小さな自分仕事に落とし込んでいる毎日だ。

深く読める日常が戻ってきてからは、わたしなりの「ベストセラーの読み方」とか、「古典の読み方」など、新しい着眼点を持てるようになってきた。

仕事も出版営業だし、ブログも本を中心に書いている本から離れられない「本の虫」だ。

ブログは自分流「かわら版」だと思って気楽に書いている。しかも、気持ちも書評も自分の言葉で書く。

どこかの誰かの借り物じゃない文章を書く毎日。

どうか、わたしのブログから「本好き」が伝染するように願う(笑)

“『本を読む人だけが手にするもの』藤原和博(著)~本を読む人・そうでない人の階層社会【書評・文化】” への2件の返信

  1. 「竹落葉 リベラルアーツで 戦略脳」 清流
     この時期の竹の葉は、筍を育てるため黄ばんだ古葉から若葉へと入れ替わる。読書で培った教養も、時代に合わせ常に刷新してこそ、思案材料として生かせる。分野別に読み分けたいね。

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